漢方治療

主な疾患と漢方治療について紹介します。

 

★めまい★

 景色や静止しているものが、揺れ動いたり、回転するように見えたり、自分の体がふらついたり目がかすんで安定しないことを言います。激しい回転性のめまいで嘔吐したり意識を失うような重症なものから、立ちくらみ程度の軽症のものまであります。

<<軽度のめまい>>動作時にくらっときたり、頭がぼおっとして目がくらみ倒れそうな気がするといったもの

◎頭のふらつき、めまい感が慢性的に続き、思考力が落ちたり、耳鳴り、物忘れ、目のかすみ、足腰がだるいなどの症状を伴う。→生まれつきの虚弱体質、老化などによって腎精が不足して脳を栄養できないためにめまいが生じます。漢方的には脳と腎は関係が深く、「腎は精を蔵し、精は髄を生じ、髄が集まって脳となる」と考えられています。精を養う作用がある「xx地黄丸」がよいでしょう。手足の冷えなどがあるときには「八味地黄丸」、ほてり、寝汗などがある場合には「知柏地黄丸」などがよいでしょう。

◎発作的なめまい感・ふらつきがあり、むくみ・吐き気・嘔吐・下痢などの症状を伴う。→慢性病、虚弱体質、老化などにより陽気が不足し、津液が滞って水飲に変化し、血行や機能を停滞させ、頭部に十分な血液が送られないことによりめまいが生じます。温めて機能を活発にして水飲を取り除く「五苓散」などがよいでしょう。

◎めまい、肩こり、頭痛、耳鳴りなどが増減しながら続く。外傷などの後遺症としてよく見られる。→脳や内耳の血行が阻滞されてめまいが生じます。血液の循環を改善する「冠元顆粒」などがよいでしょう。

 ★疲労倦怠感(疲れ、だるさ)★

  精神的あるいは肉体的なものがあり、急性・慢性の疾患で非常によく見られます。精神的ストレス、過労、年齢的要因、体質などの関連で発生します。

<<梅雨・夏によく見られる疲労倦怠感>>

◎倦怠感があり体が重だるく、むくみを伴う。また、食欲不振、吐き気、軟便、頭がぼんやりする、いつも眠いなどの症状もある→湿気の多い梅雨時期は湿の邪気が体内に侵入したり、冷たいもののとりすぎで胃腸の機能が阻害されて体の中に余分な湿が生じ、気の流れを阻害してしまいます。水分を除去し、気の流れを強める「藿香正気散」「平胃散」などがよいでしょう。

◎元気がない・倦怠感・疲労感・息切れ・動きたくないなどの症状とともに、のどが渇く・水分をとりたがる・唇や皮膚の乾燥など乾燥症状がある→夏の暑さ、激しい運動や仕事などにより、”気”と”津液(≒体液)”を消耗した状態で、急激に生じることが多いです。元気をつけ、体液を補充する「生脈散」「清暑益気湯」などがよいでしょう。

 ★頭痛★

頭痛は、だれにでも経験のある痛みです。ときには高血圧もしくは動脈硬化の症状として現れる事もあります。脳卒中などの前触れとして、頭痛を起こす事もあり、痛みが続くようであれば注意が必要です。漢方では「通じなければ痛む」といって、気血の流れや経絡が通じないことによって痛むと考えます。また、頭痛の部位と臓腑にはある程度の関連性があり、例えば、頸項部から後頭部は膀胱・小腸、ひたいは胃・大腸、頭頂部は肝などと関係があり、部位によって使用する薬物が異なります。

<<よく見られる頭痛>>

◎風邪・情緒の変動・疲労・睡眠不足などの要因で繰り返し発生、頭痛以外の特徴はあまりない→風の邪気が肝に侵入し、肝気の疏泄が悪くなることにより頭痛が生じています。風の邪気を外に追い出し、肝気の疏泄を調整して痛みを止める「川芎茶調散」などがよいでしょう。

◎慢性的に繰り返す頭痛、頭が空っぽになったようにシクシク痛む、疲れると頭痛がする、疲労倦怠感、無力感、息切れなどの症状がある→疲労、虚弱体質などで気が不足して頭部に気が十分に上昇しないために頭痛が生じています。元気をつけ気力を増強させて、陽気が頭部に上昇できるようにする「補中益気湯」などがよいでしょう。

★腰痛★

 腰痛とは、腰の片側あるいは両側が痛むことであり、病因の違いによって様々な痛みが見られます。腰は「腎の府(=集まるところ)」といわれるように腎との関連が深いといわれています。

<<よく見られる腰痛>>

◎何らかの動作によって突然腰痛が起こる。痛みで腰を動かす事ができない。動作、くしゃみ、咳で激しい痛みが起こるなどの症状がある→経絡中の気血を巡らせ、経絡を通じさせることにより痛みを止める「疎経活血湯」などがよいでしょう。

◎雨の日や、湿気の多い日に痛みがひどくなる。腰が重だるく痛み、動作のはじめに痛みが強く、動いているとやや痛みが軽減する。足などがむくむ、からだがおもだるいなどの症状を伴う→発散したり巡らせることによって風湿の邪気を取り除く「麻杏薏甘湯」などがいいでしょう。

★不眠★

 不眠といっても様々なものがあります。寝つきが悪くてなかなか眠れない、睡眠が浅くてすぐに目が覚めてしまう、夢ばかりみて寝た気がしない、終夜一睡もできないなどです。漢方では、意識は「心神」が主っていると考え、太陽が昇り陽気が盛んな日中は心神が活発で意識が鮮明であり眠ることは少なく、太陽が沈んで陰気が盛んになる夜間には心神が安静になって意識は沈潜し眠りに入ります。この心神が乱されると、不眠が発生します。

<<よく見られる不眠>>

◎いらいらして寝付けない、眠りが浅い、すぐに目覚めるなどとともに、怒りっぽい、憂鬱、ため息、胸脇部がはって苦しいなどの症状がある→精神的ストレス、緊張などによって肝気の疏泄が悪くなり、血を消耗したり、気血の産生が不足するために、肝血が虚して、心神が乱されて不眠が発生します。肝の疏泄をよくして欝滞を解くとともに、肝血を滋養し心神を安定させる「逍遙散」などがよいでしょう。

◎眠りが浅く夢をよく見て夜中に目が覚める、動悸、物忘れ、食欲不振、疲れやすいなどの症状がある→いろいろ考えすぎたり、過労による心血の消耗と脾気の損傷で、心血と脾気の両面が不足し、心神が不安定になり不眠が生じています。脾気をアップさせて気血の産生を促し、心血を滋養して心神を安定させる「帰脾湯」などがよいでしょう。